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公開日 2024.05.08更新日 2024.05.10

アクセシビリティに配慮したウェブ制作について考える

マツダ
  • Web制作
  • システム開発
  • デザイン
フロントエンドエンジニアの松田です。今回はアクセシビリティをテーマに記事を書きたいと思います。

2024年4月より「努力義務」から「義務化」へ

近年、ウェブ制作においてアクセシビリティというワードを耳にすることが増えました。
2024年4月1日には、障害者差別解消法の改正が施行され、民間企業にも合理的配慮の提供が義務付けられました。これにより、全ての事業者は2024年6月4日までに対応する必要があります。
では、ウェブアクセシビリティとは具体的に何を意味し、どのような取り組みが必要なのでしょうか。今回は、これらについての基本的な部分を振り返り、今後の必要な取り組みについて考えていきたいと思います。

規定に基づいた評価基準

ウェブアクセシビリティは、「ウェブサイトやアプリがあらゆる人々にとって利用しやすいように設計・開発されているかどうかを評価するための基準」が定められています。
これらの基準は、視覚障害、聴覚障害、身体障害、認知障害など、さまざまな障害や制限を持つ人々を含むように考慮されており、国際的な標準であるWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)によって定義されています。

※WCAG:World Wide Web Consortium(W3C)によって策定され、ウェブコンテンツのアクセシビリティを向上させるための指針を提供している

WCAGは、以下の4つの原則に基づいています。
知覚可能性(Perceivable): ユーザーがウェブコンテンツを知覚できるようにするためのガイドラインです。テキストの代替情報の提供や視覚的なコンテンツの説明を含みます。

操作可能性(Operable): ユーザーがウェブコンテンツを操作できるようにするためのガイドラインです。キーボード操作やナビゲーションの容易さなどが含まれます。

理解しやすさ(Understandable): ユーザーがウェブコンテンツを理解できるようにするためのガイドラインです。言語の明確さや予測可能性などが含まれます。

堅牢性(Robust): ユーザーエージェントやアシスト技術がウェブコンテンツを正しく解釈できるようにするためのガイドラインです。これは、ウェブ技術の適切な使用と実装に関連します。

目標とする適合レベル・対象範囲を定める

では、これらの指針をどのように満たせばいいのか、
WCAGでは、ウェブアクセシビリティの適合レベルがA / AA / AAAまでの3つのレベルに大きく分けられています。
Aレベル: 基本的なアクセシビリティ要件を満たすレベルです。これは、最低限のアクセシビリティを実装することで、多くのユーザーがコンテンツにアクセスできるようにすることを意味します。

AAレベル: Aレベルの要件に加えて、一般的なユーザーのアクセシビリティを向上させるための要件を満たすレベルです。AAレベルの準拠は、多くのウェブサイトやアプリにおいて、最低限必要なレベルとされています。

AAAレベル: 最も高いアクセシビリティ要件を満たすレベルで、ユーザーのアクセシビリティ体験をさらに向上させるための要件を含みます。

しかしながらAAAまで達成することは、案件の規模や予算、仕様においても達成することが難しい場合もあるため、民間企業の場合は、まずはAからAAのレベルの要件を満たすことを目標にするといいと思います。

また、大規模なサイトで、全ページ同様の対応が難しい場合は、「どのページ・コンテンツ」が「どの程度の適合レベルなのか」を明示的にすることも必要になります。


検証・テストはスケジュールの最後ではなく、各制作フェーズごとに設けることが理想

どの現場においても、受注が決まり、デザインも決まって、コーディングの制作工程になってから、「アクセシビリティ対策をしてほしい!」という依頼も場合によってはあると思います。

もちろんコーディングのみで対応できる項目もありますし、検証やテストは、最後に必ず行うものです。
しかし、今後のアクセシビリティ対策はコーディングフェーズだけではなくデザイン・要件定義、さらには見積もりやヒアリングなどの初期段階からどのように取り組んでいくのかの認識合わせが必要になります。A/AAレベルの基準を満たすためにも、全ての工程が関わってくるのです。

ですので、デザインフェーズにおいても、開発フェーズにおいても、チェック項目を設け、それらを満たしているのかをチェックする期間が必要になります。


今からできることは何か

今後プロジェクトの進行の中で、アクセシビリティは全ての工程により深く関わってくることになります。
ヒアリングや見積もり段階から、A~AAAのどのレベルまでの基準を満たしたサイトを作り上げるかを設定し、アクセシビリティの社内チェックシートを各フェーズで設けるなど、
「最初にルールを決めること」「全ての工程のアサインメンバーがどのようなプロセスを踏んでどのようなゴールに向かうのか共通認識を持つこと」からでも案件に合った適合レベルの要件は満たす取り組みができると思います。

品質にムラのない、全ての人々にとって利用しやすいよう設計・開発されているアクセシビリティに適応したサイト制作の「仕組みを作ること」が最初の一歩ではないでしょうか。

この記事を書いた人

フロントエンドエンジニアマツダ
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